2010/05/10

並行輸入のリスク -高すぎる授業料-

偽ヴェルサーチ販売業者らに賠償18億円、米ロサンゼルス」という記事を見つけて、損害賠償額の高さに「さすが米国」などと感心していたところ、ちょうど日本でも次のようなニュースがありました。

商標権訴訟:伊藤忠への損賠支払い命じる 知財高裁

米国から「コンバース」ブランドのスニーカーを輸入して日本国内で販売していた株式会社ロイヤルに対して、日本において「コンバース」スニーカーに関する商標権を保有する伊藤忠商事(及びその子会社等)が商標権侵害を理由に訴訟を起こしていたところ、一審に引き続き、控訴審である知財高裁でも伊藤忠側が勝訴したという内容です。記事の中で損害賠償額は示されていませんが、一審である東京地裁の判決(こちらからPDFで全文を入手可能です。残念ながら今回の知財高裁判決はまだ裁判所のサイトに掲載されていないようです。)では、ロイヤルが伊藤忠商事の子会社等に対して総額約8億円を支払うこととされていますので、高裁でもかなり高額の損害賠償が認められたものと思われます。

もっとも、一審判決を見る限り、こちらの事件は冒頭で紹介した米国のヴェルサーチの件とは違って、全くの「偽造品」を販売した事案というわけでもないようです。一審判決によると、ロイヤルは自らの輸入した商品は米国のコンバース社が製造した(=すなわち本物の)「コンバース」スニーカーであると主張し、自らの輸入販売行為は「真正商品の並行輸入」として適法であると主張しました(輸入行為がいわゆる「真正商品の並行輸入」として適法とされるための要件については最高裁判所平成15年2月27日判決をご参照ください)。しかし、一審裁判所は、米国のコンバース社と日本における商標権者である伊藤忠商事の間には法律的にも経済的にも同一人と同視し得るような関係は無いので、上記最高裁判決が示した要件のうち少なくとも一つは満たされていないと判断し、ロイヤルの主張を認めませんでした。大ざっぱに言えば「仮に米国の商標権者が商標を付したという意味において『本物』のスニーカーであったとしても、米国の商標権者と全く関係のない者が日本で商標権を保有している以上、日本の商標権者の許諾無しにそれらのスニーカーを日本国内に輸入することはできませんよ。」ということです。詳細は判決文を入手してからでないと何とも言えませんが、控訴審の知財高裁も同様の判断をしたものと思います。

ロイヤル側もある程度自らの行為の適法性に自信があったからこそ輸入販売を継続し、だからこそ損害賠償額が拡大したものと思いますが、結果的には見通しが甘かったということになるのでしょう。高すぎる授業料になりそうですね。

(2011年8月1日追記)
この投稿へのアクセスが多いようですので新たにコンバース商標と並行輸入の問題について書きました。こちらもご覧ください。

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