2010/06/30

パラグアイ戦の視聴率

皆さんはW杯の日本対パラグアイ戦をご覧になりましたか。本当に残念でしたね。普段はサッカーを見ない私ですが、ずっとハラハラしながらテレビを見ていました。私のようなにわかサッカーファンが多かったせいもあってかTBSは歴代最高視聴率を記録したようです。

日本戦64・9%!TBS歴代最高視聴率」 2010年6月30日 nikkansports.com

この高視聴率の一方で涙を飲んだのがフジテレビです。民放各局によるW杯放送権抽選会が行われた際、フジテレビは1次リーグの日本戦選択権を得たテレビ朝日、日本テレビに次いで3番くじを引きましたが、あえて決勝T1回戦を回避し、G組ブラジル-ポルトガル戦の放送権を選択しました。ところがご承知のとおり、日本代表が決勝トーナメント進出を果たしたため、この決勝T1回戦が今回の日本対パラグアイ戦になりました。フジテレビは高視聴率の試合を選択できるチャンスがありながらそれを活かせなかったわけです。

痛恨フジ社長…パラグアイ戦放送権放棄」 2010年6月26日 nikkansports.com

頑張った日本代表には失礼かもしれませんが、記事の中のフジテレビ社長の言葉にもあるように、当時の状況からすると「賢明な選択」だったといえるのでしょう。ハイリスク・ハイリターンの勝負を避けて、手堅い道を選ぶというのはビジネスにおいてはむしろ当然かもしれません。

訴訟においても上記のような判断を迫られることがあります。例えば、原告として損害賠償請求訴訟を起こした場合を想像してみて下さい。当事者双方の主張立証もあらかた終わったけれど、裁判所の心証が今ひとつはっきりしないという状況だとします。勝訴判決をもらえば3000万円位取れるが、どちらかと言えば敗訴となって1円も取れない可能性が大きい。一方、判決を待たずに訴訟上の和解をすれば相手方は1000万円を払うと言っている。と、こんな状況であれば、可能性の低い勝訴判決に賭けず、確実に1000万円取れる和解の道を選ぶのが合理的な場合が多いでしょう。

もちろん、上記は判断の一例であって一概には言えません。例えば、依頼人によっては金銭の多寡よりも判決をもらって事実を明らかにすることこそ重要であると考える場合もあるでしょう。いずれにせよ代理人である弁護士が状況を正確に分析し、それを依頼人に分かりやすく説明して、依頼人がその真意に沿った選択をできるようにしなければなりません。私もそのような場面で常に適切なアドバイスができるよう日々精進したいと思います。

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2010/06/25

デンマーク戦の前にオランダの件を片づけておく

さあ、W杯はいよいよ日本対デンマーク戦ですね。今日は日本全体が寝不足の人だらけになるでしょう。

さて、W杯と言えば前回の投稿でとりあげたオランダのビール会社によるW杯会場でのアンブッシュ・マーケティングの件(=W杯の公式スポンサーではないオランダのビール会社がW杯会場で宣伝活動を行ったとして関係者が逮捕・起訴された)ですが、FIFAとビール会社の間で和解が成立したようです。

FIFAと蘭ビール会社、W杯ミニスカート観戦問題で和解」 2010年06月23日 AFPBB News 

当事者間の和解を受けて南アの検察当局が起訴を取下げたため、起訴された女性2名も無事帰国可能になったようです。穏当な解決ではないかと思います。

ところでこの事件に関しては、上記女性らが「商標法」違反で逮捕・起訴されたとしている報道も多かったのですが、これに違和感を感じた方もいらっしゃったのではないでしょうか。女性らはお揃いの派手なオレンジ色のコスチューム(ビール会社のロゴがごく小さく表示されてはいたようですが)を着て大挙W杯の試合会場に乗り込みはしたものの、別にFIFAが保有している商標を勝手に使ったわけではありません。少なくとも日本の商標法の感覚では、FIFAの保有する商標を使っていない以上、FIFAに対する「商標権」侵害にはなりませんし、よって「商標法」違反による逮捕・起訴も考えにくいのです。そこでインターネットで検索してみたところ、Gardianの記事に次のような記述がありました。

「Placed on South Africa's statute book in 2006 was something called the 2010 Fifa World Cup South Africa Special Measures Act. The women in orange are accused of contravening two sections of this law, namely the parts that prohibit "unauthorised commercial activities inside an exclusion zone" and "enter[ing] into a designated area while in unauthorised possession of a commercial object".」(2006年、FIFAワールドカップ南アフリカ大会特別措置法と呼ばれる法律が南アフリカの法規集に加わった。オレンジ色の女性達はこの法律の二つのセクションに違反した責任を問われたのだ。すなわち、『禁止区域内における無許可の商業活動』と『広告物を許可無く占有した状態での指定地域への立ち入り』を禁じている部分である。)
World Cup 2010: Fans, robbers and a marketing stunt face justice, Fifa style」 2010年6月20日 guardian.co.uk 

というわけで、一般的な商標法ではなくて、W杯のために作られた特別法を根拠に逮捕・起訴されたようです。今やFIFAは一国の法律を変えさせる力もあるということでしょうか。前回の投稿で書いたように、世界的イベントを招致しようと思ったら主催団体に対してこのぐらい協力的姿勢を見せなければならないのかもしれませんね。賛否の分かれるところでしょうが、皆さんはどう思われますか。

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2010/06/21

美女とビールとワールドカップ

日本代表の善戦でW杯が盛り上がってきましたね。私も日本対オランダ戦の中継の時はテレビの前に釘付けでした。

ところで、オランダ戦の中継中に自民党のCMが入ったのに気づかれましたでしょうか。谷垣総裁が登場し、「今のあなたと同じように、私も日本のことを熱く思っています。」と視聴者に語りかけていました(→こちらでご覧になれます)。もちろんW杯に便乗しようとするものですが、セリフも気が利いていて個人的には好感が持てました。

しかし、便乗も度が過ぎると色々と問題を生じます。南アフリカのW杯試合会場では、国際サッカー連盟(FIFA)の公式スポンサーではないオランダのビール会社の宣伝パフォーマンスを観客席で行った疑いで、オランダ人女性2人が一時、南ア当局に拘束される事件が起きました。

オランダ、FIFAに激怒=ビール宣伝めぐり女性拘束」 2010/06/17 時事ドットコム

無制限にこのような便乗行為を許していては大金を払って公式スポンサーになる企業がいなくなってしまいますので、FIFAが神経質になるのも無理はないでしょう。身柄拘束まで必要であったのかは議論のあるところでしょうが、現地の法規に違反していることは間違いなさそうですし、ビール会社側のやり過ぎではないでしょうか。ちなみに、日本で同様の行為が行われた場合でも、(実際に警察がそこまでやるかは別にして)理論上は建造物侵入罪を適用できそうな事案のように思います。

このように公式スポンサーにならないで行う便乗行為をアンブッシュマーケティングと呼ぶそうで、オリンピックやワールドカップなどの大規模イベントにおいては、今や普通に見られる手法となっています。もっとも、多くの企業は、上記ビール会社のように違法又は違法ギリギリで行うのではなく、もっとスマートな形を取っているようです(参考:「今や恒例、オリンピックのゲリラ広告(上)」 2008年6月5日 日経ビジネスオンライン/「今や恒例、オリンピックのゲリラ広告(下)」 2008年6月26日 同)。

便乗広告もイベントの盛り上げに一役買っている気がしますので、あまりガチガチに法的規制を行うのはいかがなものかと思いますが、一方で大規模イベントの財政的な成功を図る見地からは度の過ぎた行為を効果的に取り締まる法規も必要な気がします。今後、オリンピックやワールドカップを招致したい国は、開催が決定した場合の公約としてアンブッシュ・マーケティング規制法の制定を掲げてみるのもよいかもしれませんね。

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2010/06/18

イグサを知っていますか

イグサという植物をご存知でしょうか。畳表やゴザがこの植物の茎で作られているといえばお分かりになるかと思います。日本では主に熊本県で生産されているそうです。そんなイグサに関連して次のようなニュースがありました。

違法輸入阻止要請へ」 2010年06月16日 asahi.com

熊本県が開発・品種登録して「育成者権」を有している「ひのみどり」という品種のイグサが中国で大量に栽培され、日本へ違法に輸入されているため、国内生産者らが熊本県など関係機関に水際の取り締まり強化を要請する予定であるというニュースです。

「育成者権」というとこれまた一般にはなじみの薄い言葉ですが、種苗法という法律により植物新品種の登録者に認められる一種の知的財産権です。この権利を保有している者の許可無くして当該植物の生産・譲渡等をすることはできません(詳しく知りたい方はこちらから農水省作成のパンフレットをダウンロード可能です)。

税関における輸入差止申立が行われている商品は数々ありますが(参考:輸入差止申立の現況)、今のところ育成者権を根拠に申立が行われているのは上記「ひのみどり」だけです。最終的にはDNA鑑定で侵害品か否かを確定できますが、大量に輸入される商品の中からDNA鑑定に回す貨物(=あやしい貨物)を見つけ出すのは、結局、税関職員の知識と経験が頼りですので、担当職員の方々のご苦労は大変なもののようです(参考:税関職員の体験談(PDF))。

今後、日中間の貿易は植物に関しても拡大していくでしょうから、育成者権に基づく輸入差止申立を行うべき場面も多くなっていくのではないかと思います。「ひのみどり」は今後の育成者権に基づく輸入差止申立の有用性を測る試金石ともいえると思いますので、関係機関の皆様には是非頑張って頂きたいものです。
 
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2010/06/17

ある日突然、子供のせいで億単位の債務を負うことになったら

あなたに中学生の息子がいるとします。その息子がある日突然、億単位の債務を背負うことが想像できますか。また、あなたも一緒に責任を負わなければならないと言われたらどうしますか。ちょっと想像しにくい事態ですが、全くあり得ない話でもないようです。こんなニュースがありました。

中3悪質投稿 被害20億円!『You Tube』初摘発」 2010年6月15日 スポーツ報知

中学生が違法コピーした人気マンガをYou Tubeに投稿し、著作権法違反で逮捕されたという事件です。記事中の損害額「20億円」はあくまでも閲覧回数(800万回以上)にマンガ雑誌の価格(250円前後)を掛けた額でしかありません。単純に閲覧回数と同じだけ正規のマンガの売上が落ちるということは考えにくいですし、売上減少額=利益減少額=損害額とも言い切れないので、実際にはここまでの損害額にはならないでしょう。かといって実際の損害額が大した額ではないかというとそうでもない気がします。別のソース(社団法人コンピュータソフトウェア著作権協会のHP)によると、雑誌「少年ジャンプ」からは「銀魂」「NARUTO-ナルト-」「ONE PIECE-ワンピース-」の人気3作品が無断投稿されているようです。人気の3作品を読んでしまったら、残りのマンガを読むために改めてジャンプを買う人がどれだけいるでしょうか。また、改めてこれらの作品の単行本を買う気になるでしょうか。そう考えると、この違法投稿によって落ちた売上額は思いの外大きいかもしれません。800万回という途方もない閲覧回数に鑑みれば、「億」に達する損害額もあながち非現実的ではないように思えてきます。

You Tubeをはじめとするインターネットサービスはうまく使えば生活を豊かにしてくれる素晴らしいものですが、子供でさえも他人に億単位の損害を生じさせることができる凶器でもあるということだと思います。監督状況によっては子供の違法行為について保護者が責任を負うべき事態も十分考えられますので、子供にインターネットを使わせている方は十分に注意すべきでしょう。あなたのお子さんは大丈夫ですか?

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2010/06/14

都道府県警の連携に期待する

少し前に、京都府警ハイテク犯罪対策室が、全国から捜査員を一時的に受け入れ、捜査手法を伝授する「捜査留学」を始めるとのニュースがありました。

ネット犯罪捜査法、他府県に伝授 府警ハイテク対策室が受け入れへ」 2010年06月04日 京都新聞

都道府県警の垣根を越えた素晴らしい試みですが、早くも成果が出始めているようです。京都府警、岡山県警、佐賀県警の合同捜査班が、ファイル共有ソフトを悪用してアニメ動画をネット上に流出させた男を摘発したとのニュースがありました。

著作権法違反:新型ソフト悪用で逮捕 アニメ流出容疑--3府県警 /京都」2010年6月11日 毎日新聞

きょうの協:府警がネット犯罪で『捜査留学』 根絶へノウハウ伝授 /京都」2010年6月13日 毎日新聞

このような素晴らしい試みが行われている背景の一つには、京都府警ハイテク犯罪対策室所属の木村公也警部が「警察庁指定広域技能指導官」に選ばれたことがあるようです。警察庁指定広域技能指導官制度は、警察内部において卓越した専門的な技能・知識を有する職員を、指導・教養及び支援を目的として都道府県警察の枠組みにとらわれずに広域的に活用するために警察庁長官が指定する制度だそうです(参考:警察庁による通達(PDF))。

以前見たニュース(ネット上からは既に消えていますので、残念ながらURLはご紹介できません)によれば、今年度の警察庁指定広域技能指導官には偽ブランド品摘発の第一人者も選ばれているようです。この制度が益々活用されることで、様々な分野での捜査スキルが警察全体で共有され、犯罪検挙率が向上することを期待したいですね。

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2010/06/13

再び、コンバース訴訟について

以前の投稿で紹介したコンバース事件の控訴審判決ですが、ようやく判決文が裁判所のHPに掲載されました(→こちらから全文をPDFファイルで入手可)。まだ、ざっとしか読んでいませんが目についたのは次の箇所。少し長くなりますが、引用します。
ア 内外権利者の実質的同一性の要否について
(ア) 外国において,我が国の登録商標と同一又は類似する商標を付した商品が拡布された場合に,これを輸入する行為は,形式的には,我が国における商標権を侵害することになるが,外国において商品に商標を付した者と我が国の商標権者とが同一人であるか又は法律的若しくは経済的に同一人と同視し得るような関係があるときは,実質的な違法性を欠くものとして,我が国の商標権者の有する商標権を侵害しないものといえる。
(イ) この点について,被告は,「出所表示機能が害されるかどうかの観点からすれば,登録商標権者が外国拡布者から商標権を取得する以前より,それと同一又は類似の外国拡布者の商標が世界的に著名であり,登録商標権者が使用する商標により需要者が識別している出所が登録商標権者でなく外国拡布者である場合,登録商標が示す出所は,我が国における登録商標権者ではなく,むしろ外国拡布者であると解すべきであるから,『法律的又は経済的に同一人と同視し得るような関係』があることを要件とすることなく,我が国の商標権者の有する商標権を侵害しないと解すべきである」と主張する。
 しかし,被告の上記主張は,以下のとおり採用できない。すなわち,商標権の効力により,商標の独占的な使用が認められるのは,我が国における登録商標権者に対してであり,商標法により保護される出所は,我が国における登録商標権者である。仮に,本件のように商標権が譲渡されたような場合に,需要者が,商標を付した商品の出所について,譲受人であるとの認識を有していないような状況があったとしても,それは事実上のものにすぎず,そのような状況から,譲渡人による商標の使用が当然に容認されるものではない。したがって,譲渡人と譲受人との間の「法律的又は経済的に同一人と同視し得るような関係」があることを要件とすることなく,当該商標について譲渡人の出所が保護の対象とされるべきであるとする被告の主張は,その主張自体失当である。同主張を前提とする被告のその他の主張も,それ自体失当である。
(裁判所HP掲載のPDFファイルにおける43頁~44頁)

本件は米国コンバース社製であるというコンバース・シューズを日本に輸入した業者(被告)が、日本におけるコンバース商標の商標権者(伊藤忠)から商標権侵害で訴えられた事案です。被告は、適法な並行輸入であるから商標権を侵害しないと主張しました。判例上、適法な並行輸入と認められるためには、上記引用判決文の(ア)部分に書いてあるように、外国において商品に商標を付した者(=本件では米国コンバース社)と我が国の商標権者(=本件では伊藤忠)とが同一人であるか又は法律的若しくは経済的に同一人と同視し得るような関係(内外権利者の実質的同一性)があることが必要とされています。しかし、被告は本件のような場合は、そもそも内外権利者の実質的同一性は必要ないと主張しました。

すなわち、もともとコンバース商標の商標権は日本においても米国においても米国コンバース社が保有していました。それが米国コンバース社の倒産等を経て、日本のコンバース商標は伊藤忠が保有し、米国のコンバース商標は米国コンバース社(厳密には倒産後の新米国コンバース社であり、倒産前の旧米国コンバース社とは別会社)が保有するに至りました。このような経緯があるため、被告は、コンバース商標はもともと米国コンバース社の商標として著名であり、需用者も製品の出所を米国コンバース社と認識するのだから、内外権利者の実質的同一性を欠いていても(商標の出所表示機能を害しないため)商標権を侵害するとはいえないと主張したのです(上記引用判決文の(イ)部分前段参照)。

しかし、上記判決文記載のとおり、裁判所はこの理論を採用しませんでした。内外権利者の実質的同一性の要件は本件においても必要であるとした上、本件では内外権利者の実質的同一性は満たされていないと認定し、被告による並行輸入の抗弁を排斥したのです。そして、一審同様、被告(控訴人)敗訴ということになりました。

私は内外権利者の実質的同一性を必要とした裁判所の考えに賛成ですが、感覚的には被告(控訴人)が主張したような考えも分からなくはありません。昔、少しだけ勉強したEU法の教科書によれば、欧州司法裁判所(EUの裁判所)では「同一の起源を有する商標を付された製品が輸入される場合には、現時点で輸出国の商標権者と輸入国の商標権者が無関係であっても、輸入国の商標権者は、商標権を行使できない」という商標権の『共通起源』の理論が採用されていたことがあるそうです(参考:Hag I事件判決)。仮にこの理論を本件にあてはめれば、日米両国のコンバース商標は旧米国コンバース社という「共通起源」を有しているので、伊藤忠は第三者が米国コンバース社の製品を輸入することを阻止できないということになりそうですよね。もっとも、EUでも既にこの理論は放棄されていますし(参考:Hag Ⅱ事件判決)、全く法制度の違うEUの理屈を日本の事件に当てはめること自体そもそも無理な話ではありますが。

なお、上記でEU法に興味の湧いた方(あまりいないかもしれませんが)には、以下の本をお薦めしておきます。上述の「『共通起源』の理論」の説明も同書の該当箇所を参考にしました。非常に分かりやすい良書だと思います。

須網隆夫「ヨーロッパ経済法」新世社


(2011年8月1日追記)
この投稿へのアクセスが多いようですので新たにコンバース商標と並行輸入の問題について書きました。こちらもご覧ください。

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2010/06/07

再び、松阪牛について

以前の投稿で、三重県内の「松阪牛」の関係団体が中国政府に出願した「松阪牛」や「松阪肉」の商標登録が却下されたニュースに触れ、中国・台湾において我が国の地名や地域ブランド等が第三者によって出願登録される事態について関係者が更に緊密に協力して対処していって欲しいという趣旨のことを書きました。ところが、その松阪牛の件は全く逆の事態になっているようです。

『松阪牛』の陳情で対立 三重・松阪市長と民主県連戦略局」 2010年6月5日 中日新聞 

記事によれば、松坂市が上記の件について農林水産省などに外交的な対応を促すため民主党三重県連の地域戦略局に担当部局と面談する機会を設けるよう頼んだところ、松阪市を担当する党支部は、子ども手当などの政策を批判してきた市長に不快感を示して拒否したということです。双方に言い分はあるのでしょうから一概にどちらが悪いとはいえないのかもしれませんが、松阪牛ブランドは三重県ひいては日本の重要な財産なのですから、その内部で対立しているべき問題ではないのではないでしょうか。

中国は今のところ日本からの牛肉の輸入を禁じているようですが、それでも闇ルートで和牛が出回るほど富裕層における需要は高いと言います(「中国で横行する和牛肉密輸 当局がついに摘発強化に」2008年6月26日 China Report -中国は今- DIAMOND online/「禁輸の『神戸牛』北京で出回る、摘発を強化」 2010年6月1日 読売新聞)。将来の解禁に向けて牛肉が有望な対中輸出商品であることは間違いないでしょう。そして、その場合、牛肉の値段を考慮すれば富裕層マーケットへの対応が必要であり、一般品との差別化戦略によるブランドの確立が重要であると考えられています(参考:農水省による市場実態調査結果)。そしてブランド戦略上、商標権の確保が重要であることは論を待ちません。松阪牛の件に限らず、中国・台湾において我が国の地名や地域ブランド等を第三者による商標出願登録から守ることは、国家戦略上の問題であるとさえ思います。関係者には私怨(?)を超えて、一致協力してご努力頂きたいものです。

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2010/06/04

菅直人首相誕生に寄せて

今日は別のことを書こうと思っていたのですが、新首相選出という大きなニュースがありましたので、菅直人氏のことに触れてみたいと思います。このところの首相の在任期間の短さに鑑みれば、早めに書いておかないと機会を逸するかもしれませんし。

ご承知の方も多いと思いますが、今回、内閣総理大臣に選出された菅氏は弁理士資格を保有しています(日本弁理士会の「弁理士ナビ」によると現在も弁理士として登録中)。知的財産権の重要性を十分に理解されている方だと思いますので、知財立国のための戦略的な政策実行を是非お願いしたいところです。ちなみに、菅氏は副総理の時に知的財産戦略本部の会合に司会として出席し、次のように言っています。

「・・・ご承知のように、鳩山総理も官房長官も私も川端大臣も、一応なんて言うと怒られますが、理系出身でありまして、私は弁理士も多少させていただいて、一番やらなければいけない立場にありますが、まだ必ずしも皆さんの期待に応えるだけのことができていないことを大変恐縮に思います。ただ、しっかりと今おっしゃられたことを踏まえながら、もう少し時間をお借りしながら、今言われた、単なる調整役ではなくて、戦略性を持った形での本部というものを、また色々知恵を借りて出していただきたいと思います。・・・」(知的財産戦略本部会合平成21年12月8日議事録より)

首相という大きな権限を得られたわけですから、是非、「戦略性を持った形」で知財政策を実行し、「皆さんの期待に応えるだけのこと」をやって欲しいと願わずにはいられません。頑張って欲しいと思います。

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2010/06/03

D&Gの日本撤退に思う

偽の「ドルチェ&ガッバーナ」のジーンズをインターネットオークションに出品していた男が商標法違反容疑で岡山県警に逮捕されるというニュースがありました。

偽ブランドジーンズ販売 県警 ネット出品、容疑で男逮捕」 2010年5月29日 読売新聞 

岡山はジーンズ製造のメッカですので、消費者も警察もジーンズを見る目が確かなのかもしれませんね(笑)。

さて、そのドルチェ&ガッバーナのセカンドブランド「D&G」が、服と革製品の日本での販売を今年の秋冬物で取りやめるとのことです。

伊ブランド『D&G』日本撤退 先進国に『あふれる模倣』」 2010年6月1日 asahi.com 

気になったのはその理由です。本社の役員が「日本市場に氾濫(はんらん)するD&Gの模倣品が大きな障害になっている」と語ったとか。ここでいう「模倣」の意味が知的財産権侵害に至る程度のものを指しているのかどうかは不明ですが、日本人として少し恥ずかしい気持ちにさせられる発言ではあります。もっとも、彼らが店舗数を拡大しようとしているという中国市場での「模倣品」氾濫は日本市場の比ではないのではないかとも思ってしまいますが。

ともあれ相次ぐ外国ブランドの日本撤退(→参考記事)は日本の斜陽を感じさせるようで寂しい限りです。岡山県警も頑張っていることですし、D&Gの撤退、何とか思い直してもらえませんかねえ・・・。

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2010/06/02

世界最大のオンラインショッピング市場が誕生? (4)

Yahoo! JAPANと淘宝(タオバオ)による日中の商品を相互販売するサイトがいよいよ動き始めました。各報道機関がさかんに報道していますが、私がインターネット上で閲覧した記事の中で比較的詳しかったのは次のものでした。

ヤフーとタオバオが提携、中国商品が買える『Yahoo!チャイナモール』開設 」 INTERNET Watch

偽造品防止策や輸出入手続の処理をどうするのだろうという疑問は未だに解消されないのですが、そのあたりの評価はある程度運用が行われてから報道されるようになるでしょう。引き続き注目していきたいと思います。

ところで、上記記事の中で私が注目したのはタオバオでの売れ筋日本製品です。食品・日用品・アパレルなど、地方の中小企業が取り扱っていそうな製品も多く含まれています。以前の投稿でも書きましたが、これまで中国進出を考えてこなかった企業にとって、やはりこれは大きなチャンスのように思います。先日、経済産業省から「農商工連携で地域を活性化するポイント」という資料が発表されましたが、あと数年もするとこういった資料に「中国への輸出拡大による成功例」といった事例がたくさん載るようになるかもしれませんね。

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2010/06/01

引き続き改造ゲーム機の摘発に関して

にほんブログ村というサイトのブログランキングに参加しています。末尾に記載しているバナーをクリックして頂くと、その数に応じて順位が上がるというシステムなのですが、風邪を引いたりしてしばらく更新をしないでいたら、どんどん順位が下がってしまいました。もともと順位を競うために参加しているわけではなく、単純に閲覧者を増やしたいだけなのですが、やはりある程度上位にいたいというのが本音です。というわけで、なるべくご協力をお願いします(笑)。一日一回有効らしいです。クリックして頂くとリンク先には色々な弁護士のブログが載っていますので、それなりに面白いと思いますよ。

ところで、前回及び前々回の投稿で、改造ゲーム機の摘発に際して商標法違反の構成は使いづらいという事を書きました。ですが、愛知県警は果敢に商標法違反で摘発を行っているようです。

改造Wii販売容疑で逮捕 海賊版ソフトのロック解除」 2010年6月1日 asahi.com

調べてみると過去にも北海道警が商標法違反で改造ゲーム機を摘発している事案がありました。

改造PSP売りさばき逮捕 ゲーム機の商標権直接侵害では初」 2008年2月20 日 産経ニュース

多少の困難があっても摘発すべきは摘発するということみたいですね。捜査機関の皆様には是非頑張って頂きたいと思います。もっとも、商標を削除の上で販売されてしまえば、熱意ある捜査機関でも商標法違反での立件は無理でしょう。やはり著作権法か不正競争防止法の改正によって立法的な解決を図るべき問題のように思います。  

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