2011/08/01

コンバース・シューズに関して何かあったんでしょうか?

コンバース・シューズに関して何か動きがあったらしく、コンバース訴訟について取り上げた過去の投稿(「並行輸入のリスク -高すぎる授業料-」「再び、コンバース訴訟について 」)へのアクセス数が急に跳ね上がりました。せっかくご訪問頂いているので、感謝をこめて私なりに商標権と並行輸入の問題について以下のとおりまとめてみました。よろしければご参考まで。

(設例)

-A社が米国で靴に関して「甲」という商標を保有している。 
-B社が日本で靴に関して「甲」という商標を保有している。
-C社が「甲」商標付きのA社製靴を米国から日本へ輸入した。


1.原則

C社の輸入行為はB社の許諾を得ていない限りB社の商標権を侵害し、違法。
B社はC社の輸入を差し止めることが可能。


2.例外:真正品の並行輸入

(1) 判例

判例上、以下の条件が全て満たされる場合には適法な並行輸入として商標権侵害とならない。

(a)当該商標が外国における商標権者又は当該商標権者から使用許諾を受けた者により適法に付されたものである。

(b)当該外国における商標権者と我が国の商標権者とが同一であるか又は法律的若しくは経済的に同一人と同視し得るような関係があることにより,当該商標が我が国の登録商標と同一の出所を表示するものである。

(c)我が国の商標権者が直接的に又は間接的に当該商品の品質管理を行い得る立場にあることから、当該商品と我が国の商標権者が登録商標を付した商品とが当該登録商標の保証する品質において実質的に差異がないと評価できる。

上記判例の言い回しは分かりにくいが、誤解を恐れずに簡略化すれば概ね以下のようにいえる。

(a)輸入しようとする商品が外国における商標権者(又はその許諾を得た者)が製造した真正品であること(商品の真正性)

(b)外国における商標権者と日本における商標権者が同一人であるかそれと同視できるような法律的・経済的関係にあること(内外権利者の同一性)

(c)輸入しようとする商品と日本における商標権者の商品がその品質において実質的に差異がないこと(内外商品の品質の実質的同一性)

もっとも、上記要件(b)が認められる場合、比較的容易に要件(c)も認められる傾向にある。したがって、実際上特に重要なのは、商品の真正性と内外権利者の同一性である。

(2) 設例の場合

輸入しようとしている商品はA社製であるから要件(a)は満たされている(但し、裁判になれば輸入者がその点も立証しなければならない)。問題は、A社とB社の間に実質的同一性が認められるか(要件(b))である。例えば、B社がA社の子会社である、B社がA社の日本における総輸入代理店である等の事情があればよいが、全く無関係の会社であればこの要件を満たさない。その場合、上記1.の原則どおり、C社の行為は商標権侵害ということになる。


3.コンバース・シューズの場合

知財高裁の判断によれば、米国における商標権者(米コンバース社)と日本における商標権者の間には実質的に同一人と認められるような関係がない(上記要件(b)を満たさない)。したがって、上記2.の例外論は成り立たない。ゆえに米コンバース社のコンバース・シューズを日本に輸入すると、上記1.の原則論どおり商標権侵害となる。


4.並行輸入を行う方々が留意すべきこと

並行輸入の適法性が上記のとおり例外論の上に成り立つものであることを認識し、自らの扱う商品が例外要件(上記(a)~(c))を満たしているかについて常に注意を払うべき。以前は要件を満たしていたのに、状況の変化によって不適法となることもあり得ないことではない。例えばコンバース商標の場合、昔は日米の商標権者が同一だったが、米コンバース社の倒産等を経て、現在では日米で別の法人が保有するに至っている。すなわち、ある時期から上記要件(b)が満たされなくなったものである。

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