2016/03/13

「小説家になろう」名称アウト!?

ほぼ更新停止状態の本ブログですが、どうしても気になることがあったので久しぶりに書いてみます。

「小説家になろう」名称アウト 山形で19年続く講座、大阪の企業に商標
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20160311-00000241-yamagata-l06

詳細は上記の記事を読んで頂くとして、要はこういうことのようです:

- 山形市で「小説家(ライター)になろう講座」という名称の講座が1997年から19年間続いてきた
- 同講座は、有名作家も講師に迎え、これまでに多彩な作家を輩出している
- ところが「小説家になろう」を商標登録した大阪の会社から名称の使用をやめるよう求める通知が今月になって届いた
- 同講座は16年度から新たな名称で再スタートすることにした

ネット上では名称を使用しないように求めてきた会社を非難する声も多いようですが、営業政策的に適切かどうかは別として、法的には成り立つ主張でしょう。商標権は取得していますからね。ちなみに登録番号は第5554691号のようです。内容を知りたい方は特許情報プラットフォームで検索してみて下さい。指定役務に「技芸・スポーツ又は知識の教授」や「セミナーの企画・運営又は開催」が入っています。

私が不思議に思うのは「今月(=2016年3月)になって」から通知を送られてきたというのに、上記記事のための取材を受けた日(=遅くとも2016年3月10日)には講座主催者が既に名称変更を決めている様子であることです。名称変更するなら年度が変わる4月からの方がよいといった判断もあったのかもしれませんが、それにしてもあきらめが良すぎるような。19年続いてきた講座の名前をせいぜい10日くらいの検討で変更してよいのかなと。

商標権者側に対抗しようとするなら、先使用権(=商標権者の出願前から使用している商標について一定要件のもとで使用継続が認められることがある。商標法32条)を主張して使用を継続したり、「小説家になろう」といったキャッチフレーズ的な商標は識別力が無いから無効な登録である(商標法3条1項6号)であると主張することも考えられると思います。

もちろん、先使用権も登録無効も確実に裁判所が認めてくれる保証はありません。先使用権の方は周知性という要件をクリアしなければなりませんし(ご参考:先使用権の周知性に関する判決の研究)。でもそんな主張を持ち出されれば相手方だってリスクは避けたいので、交渉の余地もあったのではないでしょうか。一定条件での使用継続といった和解は十分できたのではないかという気がします。

山形市出身の筆者としては何となくもったいないような気がして気になった一件でした。


[2016/03/17追記]

山形の講座の世話人である池上冬樹氏のTwitterによれば、まだ名称を変えるという結論は出ていないようです。争う方針なら是非手伝いたいなあ。
https://twitter.com/ikegami990?lang=ja